スーパープレイヤーは人気者

起業前に、1年だけ就職した営業の会社があった。その会社は本社と支社があり、業務内容も異なっていたことから、支社の方の選択をした。なぜこの会社に就職したかというと、今後起業に役立つ可能性のある知識も必要だったが、起業にあたり自己資金が必要だったことの方が大きい。この頃起業を視野に入れ、友人の税理士とも相談していたところ、はじめての起業の場合、融資を受ける際、実績もなく信頼性も低いことから自己資金は融資額の10分の1は最低必要で、やる気=自己資金ということだった。多角的に見た場合も、自己資金は多いに越したことはないという理由だ。

就職した支店は、業務は対面営業で、その給与は、2通りから選べるシステムだ。基本給と歩合給が選ぶことが出来、基本給の場合は、販売が成立してもしなくても決まった給与が貰える。歩合給の場合は、販売成立した場合のみ給与の対象になるという、感覚的には個人事業主のような感じだ。1年で貯蓄する目標が高かったため歩合給を選ぶことにした。

本社には、スーパープレイヤーと呼ばれる、よく売れる営業マンTさんがいた。年間2億、いやもっと多いはずの売り上げを会社に貢献していた人物だ。野球でいえば、打席に立つたびにホームランを華やかに打つ、安定性と確実性の高い打者だ。

会社に入社し、本社で営業研修が行われ、実際Tさんの営業を見学したことがあった。実際に営業現場を見て、正直驚いた記憶がある。

その営業は、まるで狩りをしているような野生の王国のライオンではないだろうかと思わせる雰囲気がTさんから醸し出されていた。Tさんは、端正でソフトな顔立ちで、語り口調は始終物腰柔らかで、涼しげでもあり、優しい言葉使いで、森の奥に隠れている獲物を静かに狙いを棲ませて、様子を伺いはじめる。そして、状況と共に変化を遂げながら、ライオンから蛇に変身し、お客さんは、蛇に睨まれたカエルになっていくようだった。今度は、すべての説明にYESを取り付け、YESがもらえないと、じっと相手の目を見て、停止する。そしてYESをもらい次々に誘導していく、そしてだんだん逃げ道は、ごく自然に塞がれていくのだ。気がつけば皆、四面楚歌状態になっている。あたりはもう真っ暗で何も見えない心細さが訪れたと思ったら、Tさんは煌々と照らされた灯りを用意して、ただ1ヶ所だけ明るい場所に立ち、そこが唯一の出口となるわけだ。皆安堵してTさんに感謝を自然にしてしまう。そこでTさんは一斉に明るい誘導口に皆を誘導し、販売成立という構図の営業方法だ。

1人のお客さんを相手に営業していたのではなく、100人に対して同時の営業をしていたのだ。不思議なことに、お客さんは、喜んで納得して自ら進んで商品を購入し、後々までもキャンセルということは一切ない。お客さん達は、皆Tさんのファンになって「Tちゃん!Tちゃん!」とピンクの声が飛びかっていた。流石だ!スーパープレイヤーは人気者だった。

この1年後、丁度私の起業と同じ頃に、Tさんも起業した。Tさんは、不動産業を始めた。今まですべてのお客さんはTさんのファンであることから、全てTさんの新会社での顧客になっていった。恐るべしTさんだ!

Tさんの部下の営業マンは、スーパープレイヤー に憧れ、営業方法を教えてもらうが、なかなか育成できないと聞いていた。実際、Tさんが部下に教えているところを見る機会があった時、部下が育たない理由が理解できた。

将棋で言えば、1手を打ちながら、常に5手先の状況を自分の頭の中で描き、その状況を変化をさせないように20手先までを読み、結果43手先には販売できるという感覚的な営業を教えていた。教えられる方は、ロールプレーの中で、1手2手進む中で「いや違う!それでは次の段階で・・・」結局5手先はどうなる。15手先を読まなくては、販売に結びつかないと、自分の頭の中の論理を話していた。独自のマニュアルはあったようだが、このような繰り返しの中で、教えられる側は、もう次の1手が出せなくなくなってしまう。次に何をどのように進めていったらいいのか迷走し、手も足も出なくなり、遂にはわからなくなってしまうようだった。

スーパープレイヤーの営業を教育の仕方を実際に見て、感性の感覚によって緻密に構成されている営業方法のようだ。それを習得するには、時間はかかりそうな様子だった。

営業方法も、人の数だけあって当たり前で、Tさんのように感覚的に営業をする人もいれば、マニュアル通りに忠実に営業する人もいて、中には、相手の話を聞くだけの無口な営業をする人もいました。営業をする人の数だけ営業方法は、多種多様にあると思います。また、営業は人との関わりの強い職種です。たくさんの人との関わりの中で、学ばさせていただいたことを感謝しています。

ここまで、読んでいただきまして、ありがとうございました。

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