虎と龍の戯れあい

代理店のG社長は、歯に衣を着せることなく、エネルギッシュで、仕事的にも高圧的に商談を進め、堅気の人が持ちあわせる感覚ではなく、人格の個性が強烈に表に現れるタイプの人だ。G社長の口癖は、「1度吐いた唾は飲み込みませんよ。」「夜道には気をつけてくださいよ。」という言葉をよく聞かされていた。他にもあるが、ここではこのくらいに。20才後半に何もないところから起業し、多角経営をしながら、今では自身のレーシングチームを持つまでに会社を成長させてきた人だ。

最初は、G社長から私の会社の製品を取り扱いたいという意向から、営業が出向いたところ、「課長に用はない。社長を連れてこい。」と言われ、5分で追い返されてしまった。そして私はG社長の会社に伺った。製品説明を終え、商談に入れば『高圧的どこ?』というくらい、全て契約は順調に進み、全てYESマンで、聞いていた状況と異なっていた。課長の言ってた人物像とは雰囲気も天と地くらい違っていたが、何か腑に落ちない感覚は正直あり、注意が必要だとも感じていた。その後G社長は私の会社に来て、今後の担当者を指名した。その担当は、私のパートナーのさぶだった。G社長とさぶは同じ年。いつからか、どちらも頭の上あたりに、G社長は虎をさぶは龍を出しながら、いつもどこでも戦わせている関係に発展していった。

ある日G社長は、会社に私とさぶを呼び商談後、食事という運びになった。メンバーは、G社長とG社長のお気に入りの部下で、顏良し、声良し、頭良しの非の打ちどころのない三拍子揃ったAさんと私達の4名だ。食事は和食屋だった。そこで接客係りが、私達の隣の席の後片づけをしていた時、食器が合わさる音が気になったその瞬間「やかましい!」とG社長は、店中響き渡るほどの大怒鳴りをした。その直後、辺りはしーんと静まり返った。G社長はそこで、さぶに「気になりましたよね。代わりに言ってあげました。」という。割合こんな調子で、へんな汗も秘かに出てきてしまう。食事の後は、「遊びに行きましょう。」ということで、G社長が貸切にした夜の店に遊びに行くことになった。

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そこで、最初はダーツをし、G社長もさぶも負けず嫌いで、どちらも1歩も引かない白熱ぶりは半端ない。G社長がダーツを投げ、さぶが投げ、どちらが的に近いかで競い合い、ほぼ互角の戦いとも思えるダーツの真剣勝負が始まった。投げ合いながら、「その投げ方では、僕には勝てませんよ。」とG社長が言えば、「メガネ曇ってるんじゃあないですか?ほぼ的ですよ。」とさぶが言い。その様子は、まるでガキ大将の遊びの戯れあいのようだ。次に私の番が回ってきた。的からは外れたがGさんは、「フォームがいいですよ。次はうまくいきますよ。センスありますよ。」と満面の笑みを見せ、さぶを挑発し、次にAさんが、投げれば「ナイス!」と。さぶに話すのとは大違いの言葉の数々。明らかにわざとだが、どちらも口が達者で面白すぎて、実際大笑いさせられる。その後カラオケに移行するが、どちらもプロ級で、甲乙つけがたい。そこでも秘かに戯れあいながら戦っている2人がいた。その後カウンターで、Gさんとさぶは、虎と龍を頭の上から出しながら、真剣に話をしていたため、何を話しているのかと近くで聴いてみると、「川中島の合戦は5回行われ、越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄・・・。」という歴史の話をしているではないか。その歴史の話は永遠2時間以上続いた。ここでも、歴史の年代やどっちが歴史に詳しいかを競い合っている。どちらも歴史の先生になれるのではないかと思えるほどの知識量と記憶力だ。結局G社長は、さまざまな言動行動から察するに、きっと寂しがり屋なのだろう。遊び相手にもなり得る人物が必要で、担当者をさぶにしたことがよく理解できた。

いつものことだが、G社長は仕事上ありえない横暴さが時々顏を覗かせ、その追度悩ませられる。さぶは何とかその横暴さを抑えながら、頭の上の龍で戦かわせながら仕事をしてきたが、ある日携帯にかかってきたG社長からの電話は、さぶの許容範囲をとうとう超えてしまった。「会社の不利益以外何者でもない。本日限りで取引停止させてもらう。」と決断したようだ。とうとう堪忍袋の尾が切れてしまった。その時、丁度ソウルで展示会をしていたが、G社長は「今からソウルに向かいます。謝りに行きます。」と言って、本当にソウルまで来たことがある。その行動力の速さにも、謝るという素直さにも驚かされた。

1度会社の会議で、G社長の会社との取引をスタッフが反対したことがある。その時さぶは、「限度を超えた無理を言うのも確かなことだが、会社の商品を我々以上に1番大事にし、愛してくれるのはG社長だ。取引は続けるべきだ。」と言ったことがある。

私から見て、長い付き合いの中でさぶとG社長は、虎と龍を出して戦ってはいるが、認め合っているところも多く、今では友情までも芽生えているようだ。G社長は、場面場面で策士でもあるが、誰よりもまっすぐに製品を見て、何日でも徹夜して検証し、納得の末に世に送り出してくれる。熱い気持ちと誰よりもエネルギッシュであるG社長には、どのようなことがあろうと感謝の気持ちしか持っていないのも事実だ。

人の数だけ個性の数もバリエーションもさまざまあります。仕事といっても本質的には人と関わり合いながら、その個性と向き合いながら進めていくところも多々あります。今も仕事も遊びもG社長との関わりは、現在進行形で進んでいます。珍しい関係性ですが、感謝しながら有難く大切にしていきたいと思います。

ここまで、読んでいただきましてありがとうございました。

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